こさいたろうの視点・論点 0048
2018/04/30
「希望を抱くには未だ至れない(南北首脳会談)」
僕が若い頃、理由と時期は思い出せないのだが、「北朝鮮とはいったいどういう国なのだろう」と思うようになった。書店で北朝鮮の内情を伝えるような本を見つけると、購入してよく読んでいた。金日成を崇拝し、その絶対権力を幼少時から礼賛する教育をして、反抗すれば収容所に送られるか、死刑、といった内容に戦慄を覚えた。
25歳で港区議会議員になった時、ある先輩区議と無所属議員控室で同室になった。旧社会党の闘士、社会主義に見切りをつけ無所属で区議に復帰していた人だ。雑談の中、僕が北朝鮮に興味・関心があると伝えると、一冊の本をくれた。「北朝鮮幻滅紀行 凍土の共和国」という本だった。
書店では見かけたことのない本だった。在日朝鮮人二世であり、元朝鮮総連幹部が肉親を訪ねて北朝鮮を訪問した際の日記風のルポルタージュ。飢餓と強制労働に苦しむ北朝鮮の民衆の実情を赤裸々に伝える内容に、驚愕し、怒りさえ覚えた。
地上の楽園と信じ北朝鮮に渡った在日朝鮮人の人々やその子孫は、今どうなっているのだろうか。いろいろな本を読む限りは、その子孫に至るまで幸せな生活をしているとは到底思えない。民衆のすべてが常に監視され、言動を密告され、移動の自由もなく、体制を批判すれば処罰されるという社会は今も続いているのだろうか。
北朝鮮には、何のかかわりもない日本人を闇夜に乗じて拉致していった過去がある。日本人に限らず、同胞の韓国人も含め、14か国から拉致を行っているとの報告もあり、国連の調査委員会は北朝鮮による拉致被害者はなんと、20万人を超えるとされている。
もちろん、北朝鮮に核を放棄させること、ミサイルによる威嚇をやめさせること、朝鮮半島に平和を取り戻すこと、これらは極めて重要な国際的課題である。隣国である日本にとっても、攻撃されれば甚大な被害を受けることは確実であり、最大級の関心事であることは言うまでもない。
しかし、北朝鮮に核やミサイルを放棄させるために、世界の各地から何の罪もない人々を連れ去ってきた過去を無視できるのか。国内で多くの国民が虐げられている疑いがある現状をそのままにしてよいのか。北朝鮮から発信されるニュース映像を見て、違和感を感じない人はいないはずだ。
無数の脱北者が後を絶たないことも、見過ごせない。韓国政府によると、韓国に入国した脱北者は累計3万人を超えているとしているが、中国や東南アジアなどに潜伏している潜在的脱北者は数十万人ともいわれている。相当の覚悟がなければ、死をかけて、家族を残して国を捨てるなど到底できるものではない。
また、かつては大韓航空機爆破やラングーン事件というテロ行為を重ねてきたことも忘れてはならない。最近では、韓国海軍哨戒艦「天安」爆破・沈没事件や延坪島砲撃事件を引き起こし、韓国人が殺されている。すべて北朝鮮自国の都合で人々の命が奪われている。
融和ムードがこれらをすべて不問に付すことに繋がっては決してならない。北朝鮮の態度の変化に乗じて、閉ざされた扉をこじ開けることに異論はない。しかし、「北朝鮮の体制保障」が、過去の非道な行為を消しゴムで消すようなことになってはならない。特に、人権を蹂躙してきた過去の行為を。
核やミサイルの放棄のみに前のめりになり、北朝鮮という国ができて以来70年近く続いてきたと言っても過言ではない、到底容認できない悪行や自国民への抑圧をなし崩し的に容認するようなことがあってはならないと心から思う。未だ、金正恩の笑顔と言動に無条件に希望を抱いてはいけない。
農夫 こさいたろう(小斉太郎;元 港区議会議員)
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