こさいたろうの視点・論点 0132
2020/03/15
非常事態宣言・国会の事前承認は必要
枝野立憲の限界
立憲民主党の山尾志桜里氏は、公然と造反した。 新型コロナウイルスの感染拡大に備える新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正採決。
山尾氏の主張は、政府が緊急事態宣言を発するにあたって、現行法では「国会への事後報告」のみを規定しているものを、「事前の国会承認」を義務付けるべきとの、私から見れば至極まっとうなもの。
同法は、国会への事後報告さえすれば、適用期間の延長も緊急事態宣言の延長も最長2年可能で、民主的統制が圧倒的に不足している、と山尾氏は指摘。これにも賛同できる。
政府が「緊急事態」を宣言すれば、都道府県知事による外出自粛要請、学校など公共施設、映画館など多くの人が集まる施設の使用禁止の指示、民放テレビ局への報道内容への介入も可能とされている。
当初、立憲民主党や国民民主党などは、「国会への事前承認」を求めていたが、妥協した。という。以下は、日刊スポーツ(2020年3月12日18時49分)より。
『特措法には、国民の私権を制約する可能性もある「緊急事態宣言」が盛り込まれるが、立民や国民民主党などは当初、宣言を行う際は事前に国会による承認(緊急時には事後承認)を明記するよう、修正を求めていた。しかし、与党が難色を示したことで、政府が原則として事前に国会へ報告するという「付帯決議」を行うことで、双方が合意した。付帯決議には政治的な効果はあるが、法的拘束力はない。』
枝野幸男代表はじめ立憲民主党の一部からは、現行法でも緊急事態宣言は出せるから今のままで何が悪いのか、私権制限は抑制的、拡大解釈の余地がないなどの言い訳めいた発信をしているが、だから今のままでいいのかといいたい。
さらに、立憲民主党国会対策委員長の安住淳氏は、『承認があっても、少数野党ではひっくり返せない』と述べたという。愕然とした。「ひっくりかえせない」と最初から言っていては議員でいる意味はない。たとえひっくりかえせずとも、言論により影響を与えねばならない。力が及ばずとも、採決による態度を明確に示さねばならない。未来のために。それが選ばれし議員の責務なのだ。この発言一つをもって議員としての資格なしだ。
調べてみれば、元の「新型インフルエンザ等対策特別措置法」は、2012年、旧民主党・野田政権下で制定されたものだ。旧民主党の幹部たちは、自らが制定した法律に問題があったと認めたくない、との思いがあるのではないかと言われても仕方あるまい。だから、私は、旧民主党政権時の責任者・幹部たちは責任を取り、政治の舞台から退場すべきことを強く訴えてきた。山尾氏も2012年の法制定の際に賛成票を投じたことを明らかにしているが、その上で、『この法律が強い私権制限を可能にすることに気づかなかったからです。この機会に、この反省を生かすべきだと考えています。』と述べている。当時、責任者だった政治家とヒラ議員だった政治家との違いが表れているものと思う。山尾氏、不倫疑惑や領収証問題の際は「この人もか」と思ったりしたが、今回の態度表明は議員本来の存在感を示した。過去の疑惑をきちんと整理して、今後の活躍を見てみたい。
さて、一方で、政権側から見ても「国会承認」は、欠くことのできない手続きだと私は思う。与野党にかかわらず、国民の代表者で構成される国会において承認を受けるにあたり、緊急事態を発する背景や根拠、期間や範囲、政権としての姿勢、決意や覚悟を明確、明快に伝えることで国民の理解と賛同を求める機会になるはずだ。さらに言えば、国民の絶大なる共感を基礎としなければ、緊急事態を乗り切ることなどできない。したがって、健全なる政権・与党であるほどに、国会承認という手続きを歓迎すべきなのだ。
新型コロナウイルスの感染拡大が進む今、政治への批判などをしている場合ではないという声もあるが、やはり局面毎の思いや意見は述べ合うべきだと思っている。「国難につき口を閉ざす」ということで我が国は破滅的敗戦を迎えるに至ったという歴史を忘れてはならないと思う。また、同じころ他国では期せずして、邪悪な独裁者を誕生させてしまったという歴史も記憶から消し去ってはならないと感じている。
自由に意見表明できる社会を保ちながら、新型コロナウイルスにできる限り一丸となって立ち向かうという、難しい道のりを模索し続ける必要がある。
農夫 こさいたろう(小斉太郎;元 港区議会議員)
今の社会や政治に対して思うことを書き、発信する活動「こさいたろうの視点・論点」を始めています。
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