こさいたろうの視点・論点 0146
2020/06/14
#種苗法改正案に抗議します に思うコト
#検察庁法改正案に抗議します、という投稿がSNSで拡散していることを先日ココで取り上げました。それと同じように、#種苗法改正案に抗議します、という投稿も拡散していました。女優の柴咲コウさんが「様々な観点から審議する必要」とツイートし、注目を集めました。そして、法案審議は先送りされました。
検察庁法等の改正と同様、コロナ禍が続く中、緊急に作らねばならない法律なのか、と感じていました。後述しますが、少なからず根強い反対論もあり、懸念を払拭する十分な説明もされず、強行的に結論を得るのは如何なものかと思っていました。その意味では、先送りでよかったものと思っています。
私は農民のはしくれでもありますので、この件については拡散する前から注目はしていました。特に、自然栽培や有機栽培といった分類の農家の方の中に、伝統的な種を守ることやそれらを自家採取して使うことに関心が深い方が多く、反対の立場の方が多いように見ていました。
今回の改正の眼目、農水省は、日本で開発された品種の海外流出を防ぐことにあると言います。日本のイチゴやブドウ、これまですでに海外に流失してきました。2年前の平昌五輪でカーリング女子の日本代表が「もぐもぐタイム」でイチゴをほおばった時、「あれはもともと日本の品種」と話題になったことはご記憶にあるかと思います。
一方、反対派は、それに伴って農家が作物から種を取る自家増殖に制限がかかるようになることを危惧しています。種苗の海外流出を防ぐ必要があることに異論はないようですが、自家増殖の制限をすることによって農家の負担するコスト増やグローバル企業に種苗開発が独占されることを懸念しているようです。
農水省は、自家増殖を制限するのは一部の登録品種のみで、一般品種と言われる多くの品種は自由に自家増殖が可能と説明しています。これに対し反対派は、その登録品種が激増していて、登録品種の指定は実質的に役所の一存ではないか、と疑っています。
また、登録品種を自家増殖する場合には許諾料が必要になることについて、農水省は「普及前提に開発した品種は許諾料は合理的水準に設定されるはず」とするが、反対派は、「グローバル企業が種子開発の中心になれば高額な許諾料が求められるはず」と反発しています。
時間的制約があり不十分ながら、できる限りの情報に目を通してみました。私なりに考える問題点が絞られてきたような気がします。
・ 登録品種がむやみに拡大する懸念はないか?
・ 登録品種の使用許諾や増殖に関し、零細・小規模事業者等への救済措置はないのか(欧州にはある模様)
・ 外国企業が在来種を勝手に品種登録するという主張についての見解
これらを丁寧に説明していくことが政府には求められています。ただ単に、「大丈夫」とHPに載せるだけでは不十分です。品種登録の要件、運用方針をより明確に示すとともに、小規模・零細農業者を圧迫しないための具体的措置を明示すべきだと思います。また、種苗開発の将来戦略も分かりやすく提示されるべきです。
先日、農民仲間と少し話しましたが、極端な主張を持つ両極の人々の言い合いにはうんざりだが、当事者からの説明が聞こえないこともどうなのかと。品種の保護の必要性は多くの人が理解するはずなので、さまざまな懸念を払拭する努力を重ねることが重要です。陰謀論的反対論への反論はそんなに難しいことなのでしょうか。
検察庁法、のことと同じで、コロナ禍の中、慌てて法案を通そうとする姿勢が、誤解を招き、ますます不信が深まってしまいました。内容以前に、権力者とその周辺の心、「寄らしむべし、知らしむべからず」的な基本姿勢の問題なのだと思います。私が政治に関わっていた頃と何一つ変わっていないどころか、この数年で悪化したように思います。
農夫 こさいたろう(小斉太郎;元 港区議会議員)
今の社会や政治に対して思うことを書き、発信する活動「こさいたろうの視点・論点」を始めています。
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