こさいたろうの視点・論点 0020
2017/10/09
「自公 vs 希望 政権選択選挙なのか?」
新党・希望の党の小池代表は、自ら衆院選に出馬しないという。明日の公示日まで何が起こるかわからないが、この間の発言を見る限り電撃出馬はなさそうだ。一方で、選挙後の首班指名の態度は明らかにしていない。煙に巻いているような状態だ。
自民党が分裂し、日本新党が大躍進した24年前の衆院選を思い出す。自民党が与党であり続ける腐敗極まった日本政治を変えねばならないと、志ある政治家が動き、国民が自民党過半数割れという選挙結果を導き出した。この時多くの国民には、政権選択選挙という認識はなかったように思う。
とにかく、自民党に権力を与え続けたままではマズいという、多くの国民の率直な思いが選挙結果に表れ、その国民の意志表示を厳粛に受け止めて誕生したのが細川連立政権だった。国民は大歓迎した。つまり、選挙中に宮沢と細川、どちらが政権を担うかと争われたわけではない。
この時は中選挙区制度で行われた選挙で、その後小選挙区制度となり、衆院選は政権選択との固定概念がついたが、乱世においてはこの固定概念を外してもいいのではないかと、僕は考えている。
たしかに、自公対民進(野党共闘)の構図のままであれば、安倍か前原か、政権選択選挙でよかったかもしれない。しかし、小池新党の誕生と野党第一党実質消滅で環境は激変した。政官癒着の選挙互助会、与党であることがレゾンデートルともいえる自民党をも巻き込む再編の芽も出てきたのではないか。
そもそも、自民党対○○党という、自民党の存在を所与のものとして政治を考えることに、常々疑問を抱いてきた。小選挙区制度がそれを助長させてしまった側面もある。二大政党の一翼にいれば、いつかは敵失で政権が回ってくる。そこには、政治の筋と言うか芯がなくなっていく。
安倍自民党の消費税の政策がわかりやすい。民主党政権時、社会保障の持続を理由として10%増税を民自公三党合意。安倍政権で8%まで上げるも経済環境を理由に10%は延期。この信を問うと、衆議院解散まで行った。
そして今回は、増税は予定通りやるが、増収分は教育無償化に充てると政策の大転換。財政健全化は先送りで工程表はこれから。増税に先立ってやるべき歳出抑制・行政改革はその言葉も聞こえなくなり、アベノミクス第三の矢、規制改革・成長戦略もいつの間にかトーンダウン。
選挙後には、緊急経済対策の名の下に公共事業バラマキ、古典的なケインズ政策は実施予定。一つの政権で、ここまで好き勝手に政策転換させていいのだろうか。筋なき政治といえるのではないだろうか。権力の維持・継続が目的化しているように国民から見える時、政権を交代させる時期なのだと思う。
「安倍首相信任か、不信任かを意志表示する選挙」
先にも論じたことがあるが、権力の長期化は否応なく腐敗とおごりを招く。森友・加計問題の根っこはまさにそこにある。北朝鮮への対応も、今は対話よりも圧力重視という方向性は賛同するが、発信する姿勢にはおごりが見えるように僕は思う。抑制的でない。
再び24年前のこと。細川さんを首相にしようと初めから国民が考えていたわけではなかった。ご本人も同様だったはずだ。あの頃、非自民側の選挙の周辺に身を置いていたが、とにかく政治の流れを変えねば、歯車を回す時と多くの人が真剣に考えていた。
選挙後、細川さんが首班指名を得るまでには、さまざまなドラマが語られる。長くなるのでここでは取り上げないが、要は、国民による選挙の結果が細川首相を生み出したことには間違いない。細川さん本人の決断もさることながら、細川政権誕生に至るすべての動きに国民の意志のタガがはめられたと言っていい。
今回の衆院選、その時と同じように捉えればいいのではないかと僕は考えている。長期政権の弊害が顕著になってきた安倍政権に退場を願い、政治の歯車を回すための選挙にすべきではないか。国民は、歯車を回す結果を政治に与えるべきではないか。
ここから、少し乱暴なことを述べてみたい。選挙後、安倍首相が退陣するならば、次期総理大臣は石破茂氏でも、野田聖子氏でもよいのではないか。そもそも安倍首相の政権運営をよしとしなかった人物。選挙公約に基づく政策協定を結び、連立政権でもよいのではないか。それで自民党が割れればなおよし。
希望の党から小池代表が出馬しないとなると、仮に希望の党が第一党となった場合、首班候補は細野氏?若狭氏?それとも前原氏?僕は、今回の流れで小池氏以外はありえないと思う。小池氏頼みで選挙前に移ってきたような人を、いきなり総理大臣にできるはずはない。
マスコミは希望の党に対して「誰を首班指名候補とするか」を執拗に探ってくる。思いはわからなくはない。でも、選挙による国民の意志表示に委ねることがあってもいいのではないか。希望の党も、ある意味のリスクを背負っている。首班候補を明らかにしない希望の党への国民の評価を待ってもいいのだと思う。
希望の党ができず、民進党と野党共闘が相手であれば、安倍自公政権はかなりの確率で継続したものと思う。それが、先の党首討論で安倍氏は「自公で過半数」でも政権継続と言い出した。予防線を張らねばならないほど厳しさを増しているのだろう。
希望の党の出現により、その評価はさておいても、自公過半数割れの結果で安倍政権が退場する可能性が出てきたといえる。従来敷かれているレールはそのままに、走らせる列車を変えたり、停車駅やスピードを変えて対応できるほど今の日本は生易しい状況ではないはずだ。
僕は、小池氏の登場で政治の歯車が回る、新しいレールが敷かれる可能性が出てきたことを率直に歓迎したい。確かに、受け入れがたい右翼思想の持ち主が参加するなど危ういところも多い。ただ、それは一方の側に左に行き過ぎている人がいるのと同様。公約を見る限り、行き過ぎることはないのではないか。
国民が選挙結果に責任を持ち、選挙後も政治をしっかりと監視する、許せぬ事態が招来すれば厳しく退場を促す、その覚悟さえ持てばよいのだと思う。「全部ダメだから安倍自公政権継続」、これが日本政治にとって最も避けるべき選択肢であり、避けられる可能性が出てきたものと僕は思っている。
農夫 こさいたろう(小斉太郎;元 港区議会議員)
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