こさいたろうの視点・論点 0149
2020/07/29
コロナ禍、金を配る政策、続々と
私の住む山梨県北杜市では6月、市独自に8万円(地元で使える商品券5万円と現金3万円)を全市民に給付する案を市長が議会に提案しましたが、議会側の多数は「基金の大幅な減少は北杜市の財政基盤を揺るがすことになる」などとして商品券3万円分のみ給付する修正案が成立することになりました。
北杜市は市長も議会議員もこの秋に改選の選挙があり、選挙を背景にした駆け引きの側面も否定できませんが、いずれにしても、コロナ禍における地方自治体独自の経済対策が実施されることになります。ただ、国と違うのは、この種の経済対策のための借金はできないというところです。だから、上記にあるように「基金」という貯金を取り崩すしか、やりようがないのです。国はない袖を振れますが、北杜市は振れません。お財布にお金のある時しかできない政策で、何度もできる政策ではないわけです。
真水を市場に流し込むわけですから、一定の効果はあるでしょう。しかし、それは一過性で、すぐに泡となって消えていくでしょう。その意味で、税金の使い道として賢明だったのか、費用対効果はいかがか、本当に必要な施策だったのか、選挙の前に厳しい検証が必要です。
ちなみに、北杜市では子育て世帯に5,000円、乳幼児のいる世帯には更に15,000円の給付金を出すなど、現金給付的施策が手厚くなっています。選挙対策、との指摘はあながち間違いではないように思います。
北杜市の給付金施策に触れ、他の自治体の動向が気になり調べてみました。
最近のことで、大きな話題になっていたのは東京・千代田区。新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ経済活性化策として、区民全員に現金12万円を給付する方針を決定。これから議会で審議されるようですが、北杜市の施策同様、腑に落ちません。本当に経済活性化に資するのでしょうか。効果検証方法を同時に示すべきだと思いますが、きっとできないはずです。特に東京という大経済圏では。
なお、報道によれば、「区長の疑惑隠し」との声も紹介されています。北杜市のケースと同様、政治家の人気取りに使われている感が否めません。私が政治の現場にいる時も一部有権者や支持母体への利益誘導が疑われるような予算の使い方はありましたが、ここまで露骨に現金をばらまくようなものはなかったと思います。もう少し、恥かしそうにと言いますか、抑制的に、回りくどくやられていたように感じます。ずいぶん下品になってしまったように感じます(品がよいからいいわけではありませんが)。
市町村独自の給付金、さらにネット検索をかけていくと、品川区では3万円(中学生以下は5万円)の給付金が決まっているのをはじめ、1-3万円の給付は全国の多くの自治体で実施されているようです。先に述べたように、おそらく財源はいわゆる「貯金の取り崩し」だと思います。だから、貯金のある分しか、この政策は打てないのです。
コロナ禍における現金一律給付による経済対策、これは国が全国を対象に行うべき政策ではないでしょうか。今の法体系、国と地方の関係性、地方自治体の持つ権限からしても、一般財源を投入する現金給付政策は持続可能な政策ではないはずですし、経済への効果も極めて限定的になってしまいます。地方自治体は、もっときめ細かく、本当に困っている人たちを見極め、手を差し伸べるべきだと私は思います。
もらえることは有難いです、正直申し上げて。でも、その現金給付、市長の人気取り、選挙対策、住民懐柔の意味合いが強すぎないか、もっと違う税金の使い道が必要ではないか、一市民として厳しくチェックすることが求められていると思います。
農夫 こさいたろう(小斉太郎;元 港区議会議員)
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