こさいたろうの視点・論点 0033
2018/01/15
原発なき日本に
1月10日、僕は目を覚まされたような気がしました。小泉純一郎さんは訴えていました。「原発ゼロのハードルは高くない」。そして、「金がかかっても原発を維持したい勢力に蹂躙されているのが悔しくてたまらない」と。全く同感でした。でも、政治の現場を離れた僕は何の行動もしてきませんでした。
小泉さんの発表していた「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」。「原発は極めて危険かつ高コストで、国民に過大な負担を負わせる」との基本姿勢の下、原発の即時停止、核燃料サイクル事業からの撤退、原発輸出の中止、自然エネルギーの電力比率を2050年までに100%、などの内容。
すべて賛同しています。もうやらなきゃいけない、小泉さんもそう思っているのだと思います。日々の生活に追われ何の行動もしてこなかった僕ですが、何の影響力を与えられずともできることを探さねばと、この日、勝手に目を覚まされた気持ちになったわけです。
「原発は安全」「コストは他の電源に比べて一番安い」「CO2を出さない、永遠のクリーンエネルギー」。専門家の意見を信じていたが、あの原発事故を見て勉強し直し、全部ウソだったと気づいた。「過ちを改むるに憚ることなかれ」。小泉さんは、この思いで原発ゼロ運動を始めたと話しています。
首相だった小泉さんとは全く立場は違いましたが、僕も原発の危険性やコストなどに深く思いを致さず、資源のない日本では一定の原子力発電は許容せざるを得ないだろうと考えていました。しかし、福島の事故を目の当たりにし、僕の思いは一変しました。
よく考えてみれば、絶対事故を起こさないなんてあり得ませんよね。しかも、ひとたび事故が起きれば、自動車や飛行機の事故とは桁違いの大きな被害を及ぼし、それは世代を超えて続いていきます。現に今、住民は故郷を失い、放射能汚染の不安の中で生きていかねばならない状況が続いています。
事故を起こした原子炉はいまだに処理の目途も立たない。周辺への長期的影響も誰もわからない。汚染水は増え続け、海への流出も懸念され、ある程度処理したら流しちゃえという暴論もある。原子炉を動かした際に出る使用済み核燃料の処理方法も、廃棄物の最終処分も確立されていない。
また、事故発生直後、「東電をつぶさない」という大前提で「電気料金値上げや税金投入」を行う法律を民主・自民の水面下の取引で成立させてしまいました。役職員の報酬カットはもとより、送電網等資産の整理売却、株式減資等で賠償金支払いをさせるべきだったと思います。
その結果、当初10兆円といわれた処理費用は21.5兆円に膨れ上がり、さらに増える可能性が高いと思われます。ここには僕たちの税金が投入され続けるのです。しかし、今や原発事故は風化してしまい、税金投入のみならず、原発事故が及ぼす社会への影響も議論されなくなってしまっています。
このような日本社会に、粘り強く脱原発社会の必要性を説き続け、法案作成にまで至った小泉さん、僕は心から敬意を表したいと思います。これをきっかけとして、改めて、日本のエネルギー政策についての国民的議論を再開させねばならないと強く思うのです。
しかし、1月15日に報じられた共同通信の世論調査では、小泉純一郎元首相らが主張する全原発の即時停止に賛成49.0%、反対42.6%とのこと。驚いています。あの事故を目の当たりにしてなお、原発を動かすべきなのか。僕が間違えているのでしょうか。わからなくなってしまいます。
安倍自民党政権、経団連、電力労組、日本社会の指導層は一貫して原発の必要性を訴えています。政府は「原発を重要なベースロード電源」と明言し、「安全性の確認された原発は再稼働を進めるという政府の一貫した方針は変わらない」と強調し続けています。
あの事故を受けてなお、無理やり「再稼働」でしょうか。事故後、ほとんどの原発が動かない中、電力は不足していません。あの事故を起こした日本が「原発輸出」すべきでしょうか。安易な金儲けにしか見えません。しかも、純粋な民間事業でなく、政府保証付き。事故が起きれば税金投入という甘やかしぶりです。
僕には、既得権益の維持温存としか見えません。自分たちのためだけ。これら指導層は、家族ともども原発の隣に住んでくれと言ったら、住むだろうか。もし事故が起きれば、子や孫も含めて事故処理作業にあたってくれと言ったら、快諾するだろうか。そんなことを思ってしまいます。
少し脱線しますが、戦争も同じだと思います。戦争遂行の指導者層は、最前線にはいきませんよね。その子どもたちも最大限守られることと思います。過酷な場面に投入されるのは、名もない庶民。庶民の過酷さに思いを致せない指導者を持つ国民はあまりに悲惨ではないでしょうか。
戦争と関連させて言えば、原発は原爆に変わり得る危険性も無視できません。テロリズムによって原発が破壊されれば、まさに原発は日本国民に向けた兵器ともなり得てしまいます。北朝鮮情勢が緊迫する中、特に日本海沿岸に集中立地する原発は極めて危険ではないでしょうか。
僕は今こそ、政治によって方向転換を図るべきと思います。日本は民主主義の国です。国権の最高機関は国会、国会を構成する議員は国民が選びます。福島の事故を受けてなお原発が必要だという指導層を取り換えるには、国会を変えるしかありません。
今回の小泉さんの動きが、原発に頼らない新しい日本をつくる第一歩になってほしいと期待しています。山里に住まう僕にできることはほとんどないのですが、小泉さんが顧問を務める「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」と、発起人をされている「自然エネルギー推進会議」の会員になろうと考えています。
原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟:http://genjiren.com/
自然エネルギー推進会議:https://janfre.com/
農夫 こさいたろう(小斉太郎;元 港区議会議員)
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