こさいたろうの視点・論点 0041
2018/03/11
本当のことを伝えること〈民主主義の根幹〉
昨日、NHKラジオ『震災7年 福島「漂流する」子どもたち』という番組を聴きました。明日、東日本大震災から7年、避難を余儀なくされた子どもたちの苦悩、今なお続いていることを取り上げていました。被害に軽重はないものの、原発事故による被害は異質のものであると改めて感じました。
自然災害による被害と、その後に起きた原発事故による被害を同列に扱ってはいけないと思うのです。一度事故が起きれば放射能被害は世代を超えて続き、そのことに起因して人々の心をも大きく揺さぶることになります。子どもたちはこのような状況に翻弄され生きていかねばなりません。
事故直後から、情報は統制され続けました。それはある意味今でも続いているのだと思います。原子力発電所がひとたび事故を起こしてしまった時、それが永遠ともいえる被害を及ぼすことから目を背けてはいないでしょうか。原発を続けたい大人の論理が優先されているのではないでしょうか。
「原子力規制委員会が、世界で一番厳しい審査基準を満たしていることを確認し、安全が確認されたものから再稼働させる」、現政府が原発再稼働をさせる際の条件としています。しかし、安全を完全に確認することなどできないはず。福島の今も続く被害を直視できていない証左。
二度と事故を起こさないためには、原子力発電をやめるしかありません。でも、やめたくない大人がたくさんいるからやめられないのだと思います。それなら、なぜやめたくないのか、なぜ続けたいのか、続けたら将来にわたりどんなリスクがあるのか、本当のことを伝える責任があると思います。
本当のことを伝えずに、都合の悪いことは伝えずに、自分たちの思い通りにしようという権力者の姿勢を見過ごしてはなりません。本当のことが伝わらないからこそ、いまだに原発事故による被災者、避難者に対する差別や偏見が続きます。社会の空気を変えねばならないと感じます。
「都合の悪いことは伝えない」といえば、森友事件の公文書改ざん疑惑。この週末に大きく動きました。佐川国税庁長官(全理財局長)辞任、当時の近畿財務局交渉担当者の自殺、これらを受けて財務省が、週明けに書き換えがあったことを認めると報じられ始めました。
朝日新聞の報道がなければ、その後の国会での追及がなければ、このことを国民が知ることはありませんでした。国民が気付かなければ公文書を書き換えてもよい、ということがあってはならないはず。問題発覚当初、「捜査中につき答弁を控える」という対応でやり過ごそうとした内閣の責任は免れません。
原発事故と同列に扱うなとの声もあるかもしれませんが、権力者の都合によって国民に本当のことが伝えられない、歪めて伝えられる、という意味において問題の根っこは同じだと感じています。権力者による情報統制が積み重なり、それが当たり前という日本社会にしてはならないと思います。
日本における主権は国民にあります。つまり、権力者の持つ権力の源泉は国民にあります。したがって、政治や行政の情報は原則として公開されなければなりません。ましてや、恣意的に手が加えられるようなことがあってはなりません。最終的な評価と判断は国民がなすべきです。
今、この基本的な原則が揺らいできているように私は感じています。時計の針が戻りつつあるようにも感じます。「よらしむべし、知らしむべからず」、出典は論語、当初の意味とは別に封建時代、「人民はただ従わせればよく、理由や意思を説明する必要はない」という意味で使われるようになりました。
時代は移り、形こそ主権在民の社会になりましたが、いまだに「よらしむべし…」の風土が色濃く残っていると思わざるを得ません。今回の森友疑惑しかり、原発事故後の権力者の姿勢からも感じられます。未来の日本を拓くために乗り越えなければならない根本問題だと、私は強く思います。
7年前の今日、東日本大震災は起きました。地震、津波、そして原発事故。筆舌に尽くせぬ甚大な被害を及ぼしました。その辛苦を忘れぬようにすることは当然ですが、多くの犠牲の上に私たちは何を考え、何を目指すべきなのか、今一度思いを馳せねばならないと改めて感じています。
農夫 こさいたろう(小斉太郎;元 港区議会議員)
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