決着のつかない理由

 

 

こさいたろうの視点・論点 0051

2018/05/29

 

決着のつかない理由

 

日本大学アメリカンフットボール部の反則タックル問題。発生したのは5月6日。すでに三週間以上経っているが、問題は決着するどころか、混迷を極め、泥沼に陥っている。昨日の報道では、ついに選手が声明を発表するようで、そこには「コーチ陣一新」を求める内容を盛り込むとのこと。

 

監督が辞めるだけでは納得せず、指導者を全て入れ替えろという選手の思い。悪質タックル事件をきっかけに、これまで我慢していたものが噴き出てきたといえる。そもそも選手と指導者との間に信頼関係が醸成されていなかったものと推察せざるを得ない。近く発表される選手の声明を注視したい。

 

反則タックルをした選手は「監督・コーチの指示があった」と言い、監督・コーチは「指示はしていない」と真っ向から否定。言った言わないについて、どちらが正しいのか真相は簡単にはわかるまい。しかし、フィールドでルールを無視した危険な反則タックルが行われたのは事実。

 

さらには、わかっていたのか見逃したのかは決着していないものの、指導者が当該選手にその後もプレーを続けさせたことも事実。試合後の、悪質タックルを容認するかのような監督の音声データも残っている。この状況では、仮に明確な指示がないとしても、指導者は自らを省み、責任を取るのが当然ではないのか。

 

それでも、事件発生から長期間指導者たちは雲隠れし、ことが大きくなってしまったから仕方なく辞めるというふうにしか見えない。こんな指導者を選手が信頼するはずがない。今までは好きなアメフトを続けるために我慢してきたのだろう。宮川選手の勇気ある会見が心を動かしたのだと思う。

 

ただ、報道等から推察するに「コーチ一新」では本質が変わらないと感じる。内田監督は、監督は辞めるといったものの、日大の常務理事職は辞めないと。日大の職員人事や体育会運営の実権を握るのがこの常務理事職のようで、責任を取るふりをしながら、自らの権力は巧妙に維持・温存しようとしているとしか見えない。

 

指導者として事の本質を理解し、向き合い、本当に反省するなら、責任を取るなら、日大の理事からも去るべきだ。現場は離れるが役員には残る、では責任を取ったことにならない。選手たちの求める「コーチ一新」の人事に関与し、権限を行使できる立場に留まるということになる。本質は変わらない。

 

明確に指示していなくても、現場は指示とみなして動いた。仮に、指導者自身がそこまでやれとは意図していなかったにしても、現に事は起きてしまった。これは紛れもなく指導者の責任ではないか。最終責任を負うのが指導者の役割ではないか。それができない指導者の存在そのものが、決着がつかない理由だ。

 

 

おそらく多くの人が感じているのだと思うが、同じような構図が日大とは別の世界で広がっている。国政における、いわゆる「モリカケ」問題だ。公文書改ざん、次官のセクハラ辞任など、ありえない不祥事が後を絶たない財務省。そのトップが最終責任を負わない。取り方をはき違え、その座にとどまり続ける。

 

財務省が自分で辞めないなら、任命権者である首相が厳格に判断し、人事権を行使すべきはずだが、そのそぶりはない。逆に守っている。それは、自らも最終責任を取らねばならない瀬戸際にいるからだ。「私も妻も関与していない」「関与していたなら総理も国会議員も辞める」と自らを瀬戸際に位置付けた。

 

百歩譲って、仮に明確な関与はなかったとしても、これまで明らかになった事実を総合すれば、首相を慮った、つまり忖度があったことは否定できない。そこに端を発しているならば、政治指導者は自省しなければならない。責任を取らねばならない。それが、国民から与えられた国会議員の、大臣の役割だ。

 

その姿勢がかけらもないことで、すでに一年以上の時間を空費してしまっている。このことにも責任を感じてもらわねばならないが、終わらせない野党が悪いと言わんばかりの態度。仮に明確な指示・関与がなくても、国民に疑念を抱かせ、払拭できず、払拭する努力も不足している時点で、政治責任を取るべきなのに。

 

決着がつかない理由。それはズバリ安倍首相。自らを省み、最終責任を負う姿勢が全くない。それはつまり「自分は何も悪くない」と本気で思っているからなのだと思う。社会的重みは別として、内田監督と同様。指導者が責任を取って初めて、真相が究明され、本質の改革につながる。

 

日本の社会的指導層の劣化。これは、広く言えば、国民全体にもその責がある。政治、教育、スポーツ界にとどまらず、日本の各界において、その任に相応しい指導者をどのように選び出すか、日本の喫緊の課題だ。

 

 

農夫 こさいたろう(小斉太郎;元 港区議会議員)

 

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