こさいたろうの視点・論点 0054
2018/06/21
監視機能という役割
最近「来年は統一地方選挙だなぁ」と思うことがたびたびあった。幾人かの方から「小斉さんの話を聞きたい」と連絡があったからだ。ある方はわざわざ山梨までお越しになられた。自分のわかる範囲で質問に答えるような感じなのだが、話をしながらいろいろなことを思い出し、思いが巡る。
私が初めて港区議選に立候補して初当選したのが1995年。1999年、2003年と当選させてもらい、三期目の途中、2004年に港区長選挙に立候補するも落選。3年浪人の後、2007年の港区議選に再出馬し当選。4年の任期満了で退任。2012年衆院選、2013年参院選、いずれも敗退、政治の世界を離れた。
18年間、前職の秘書時代を含めれば約20年政治の世界に身を置き、7回の選挙を経験したということになる。結局、区議選以外は全敗だった。最後の国政挑戦は、多くの方に生活まで支えてもらっての挑戦で、何度もお願いできるものではなく、最後の挑戦と決意して臨んだ結果だった。
私の一貫した政治テーマは「行政改革」。税金の使い道を厳しくチェックすること、権力に近しい者が、あるいは権力を持つ者がそれを利用して得をするようなことがないよう厳しく監視すること、ここに問題があれば民主政治の屋台骨は知らぬ間に揺らいでいくと強く思っていた。
昨今のモリカケ問題もこれにかかわる大問題だ。仮に、政治家の具体的関与がなかったとしても(それはあり得ないと経験的に思うが)、国民に疑念を与えるような状況が生じていることのみをもって、政治家には重大な責任がある。安倍首相に責任を取らせ入れない今の国会とは何なのか。
選挙に出ようとする人は、実現を目指す政策を示す。もちろん大切なことだと思う。ただ私は、議員となって政策実現を目指す大前提として、役所の仕事を厳しくチェックする姿勢があるかが問われると思う。どの方向で問うていくかは主義・主張による。ただ、その姿勢がなければ代議員になるべきでない。
日本の政治は、良し悪しは別として、役人が政策立案をし、それを執行していく。国政であれば政府・与党の意向を受け、地方であれば公選首長の大方針の下に政策は作られるが、多くの場合は役人がその知見に基づき原案を作る。したがって、日本の議会の役割はそれを監視することだと私は思う。
「役人は悪」なんて言うつもりはない。むしろ、日本の役人は能力が高いと思う。ただ、もちろん万能ではなく、時には主権者が誰かを忘れてしまうこともあるし、何らかの圧力に屈して一部の利益に資する行動をしてしまうこともあるかもしれない。そんな時、問題を指摘し、誤りを正す役割を果たす人がいなければどうなるか。
今の政治には、この「監視機能」が極めて弱くなっているように見える。だから、公文書の改竄がいとも簡単に行われてしまう。自民党内でも石破茂氏や小泉進次郎氏が苦言を呈するコメントを発している報道を見るが、甘い。野党も、役人に罵声を浴びせて満足しているだけに見える。
選挙に立候補する人々の政策を見極めることも大事だが、行政という権力を常にチェックする、それを主権者と共有する姿勢を持った人物を一人でも多く議会に送り込むことが必要だ。正直、私たち有権者にそれができていないからこそ、私たちの求める政治にならないのだと思う。
役人と仲良くし、役人に丸め込まれ、役所のやることは追認。そうして、言葉は悪いが大したことのない選挙公約をいくつか役所にやってもらい、公約を実現したと大げさに有権者にPRする。そんな議員が本当に必要だろうか。政治と行政の緊張関係、それを前提とした厳しい議論から必要な政策が編み出されるはずだ。
経験から言えば、少人数でも厳しいチェック機能を果たせる議員が議会にいれば、良質の政治的緊張感は極めて高まる。来年は統一地方選挙。地方選挙では、自民党とか何とか民主党とか所属政党は実はあまり関係ない。地方議会の民主党系議員は、実は役所ベッタリ、チェック機能を果たせない人物も多い。
私たちが議会に送り込む議員の質によって、政治の質が決まるといっても言い過ぎではないと思う。誤解を恐れずに言えば、今の政治がダメだと愚痴ることは、天に唾していることと同じだ。普通に暮らしていると候補者を見極めることは極めて難しい。この数年、政治を離れ痛感する。それでも、可能な限り見極めねばと強く思う。
農夫 こさいたろう(小斉太郎;元 港区議会議員)
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