こさいたろうの視点・論点 0062
2018/09/02
「出自」ではなく「実力」が評価される社会が必要
少年野球をしている息子が楽しみにしているテレビアニメがある。メジャーセカンドという作品(NHK Eテレ 毎週土曜17:35-)。小学生の野球漫画だ。
主人公と準主役の小学生二人の父親は、元メジャーリーガーで盟友という設定。さらには、主人公の祖父もプロ野球選手だったというストーリー。物語としては面白くていいのだが、このアニメを見ながら密かに感じていることが私にはある。それは、二世や三世が当たり前に描かれていることへの漠然とした違和感だ。
私が子どものころに熱中した野球漫画に、二世は出てこなかった。息子が野球を始めたことで思い出して、最近文庫版を大人買いしてしまった「ドカベン」。主人公の山田太郎は、小学生時代に交通事故で両親を亡くし、畳屋の祖父との貧しい家庭に育つという設定だ。
実際の野球選手でも、王選手は下町の中華屋の息子だったし、野村選手は母一人貧乏な生活から這い上がってきた。調べると、長嶋選手も大学時代に父親が急逝し、母親が行商で生活を支えたとか。
もちろん、スポーツ選手の二世でも、成功を収めるためには人並みを越えた努力をされているはずで、敬意を表する。ただ、今の時代なので貧乏からとは言わないまでも、特別でない環境から努力で夢をつかむ方に光を当ててほしい。というか、当てるべきだと私は思う。
出自ではなく、思い(夢)や努力の価値を重んじるべきではないだろうか。
私は、政治が与える影響も少なからずあるように感じている。今月、自由民主党の総裁選挙がある。安倍首相と石破氏の一騎打ちになりそうだが、この二人も実は世襲議員だ。
安倍首相の祖父が岸信介元首相であることは有名だが、父も父方の祖父も代議士である。一方の石破氏も、父は鳥取県知事から参議院議員となった政治家だ。
さらに言えば、総裁選挙にあたり名前の挙がっていた野田聖子氏は祖父が代議士、河野太郎氏と岸田文雄氏は祖父も父も代議士、小泉進次郎氏に至っては曽祖父以来4代目の大世襲政治家である。自民党の総裁候補は、これ以降も軒並み世襲政治家が続く可能性が高い。
政治家の子が政治家に。政治家一族。農家だとか造り酒屋が代々跡を継いでいくことに違和感はないが、政治の世界も同じようでいいのだろうか。国民の各界各層から有為な人材を、出自とは関係なく見つけ出していくことが求められるのではないだろうか。
特に、これから急速な少子高齢化が進み、社会の構造が変わり、新しい将来設計図を描かねばならない時、現行システムの中でいわば勝ち組ともいえる政治家一族の一員に、社会システムの大胆な変更を担えるだろうか。私は疑問符を付けざるを得ない。
スポーツの世界であれば、いくら二世でも実力が伴わなければ残念ながら淘汰されてしまう。しかし、政治の世界では、いわゆる地盤はもちろんのこと、人脈や経験など有形無形の財産が引き継がれることで、地位が継承されていく。必ずしも実力とは言えない下駄を履く。既得権といえる。
20世紀には圧倒的速度による文明の進展があり、これからはその歪みが世界の至る所で表面化していくはずだ。国内外における大きな変革期を迎えるにあたり、私たち主権者には、政治を任せる人材を出自によってではなく、その実力や見識、情熱を厳しく見極めて探し出す努力が求められる。
そんな時代にあるからこそ、子どもの野球漫画であっても、主人公の役柄設定を必要以上に気にしてしまう。
農夫 こさいたろう(小斉太郎;元 港区議会議員)
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