超高層都市・東京の未来

 

こさいたろうの視点・論点 0111

2019/09/25

 

超高層都市・東京の未来

 

このところ、ネットニュースを見ていると、いわゆる「タワマン問題」についての記事をよく見かけるような気がします。今は年に数回しか行かなくなってしまった東京ですが、高速道路から見える街の眺望は、超高層ビルの林立です。何度か見ているうちに、違和感すら感じなくなってしまいました。

 

振り返ると、私が港区議に初当選したのが1995年〈平成7年〉。この時、港区にある超高層ビルは赤坂アークヒルズだけだったような気がします。この24年の間に、港区は超高層の街に変貌しました。港区にとどまらず、湾岸各区から内陸部、周辺都市にも超高層開発は拡がり、今に至ります。

 

さらに、この間には、超高層の再開発にとどまらず、狭小な敷地についても国策により容積率が大きく緩和され、必ずしも周辺環境とは調和しているとは言えない中高層ビルが、まさに「雨後の筍」といった様相で林立していきました。既存住民からの問題提起もありましたが、あっさりかき消される猛烈な勢いだったと記憶しています

 

当時、私は急激に進行する高層化に懐疑的な立場で論戦していました。数十年後の姿をどう想像すればいいのか、ゴーストタウンにはならないのか、次の更新期にはどのように対応しようとしているのか、開発者も行政も誰も真剣に考えていないこと、議論がなされないことに大きな違和感、危機感を覚えていました。

 

当時、共産党以外で超高層型の再開発や急激な容積率緩和に疑義を唱える議員はごくわずかで、私は当時の区長から「小斉は共産党だ」と喧伝されたことを思い出します。しかし、私としては、共産党と同じかどうかなどは全く問題ではなく、港区のまちづくりはそれでいいのかという率直な思いからの言動でした。

 

また、私が議会で超高層型のまちづくりへの懸念を表明し続けることを知った森ビルの創業社長(当時)が、段ボールいっぱいの資料、ご自身の著述などを、便箋10枚にも迫る直筆のお手紙とともに送ってこられたこともありました。そこには、超高層まちづくりが絶対に必要だ、という信念がありました。

 

しかし、信念は感じられたものの、私には明るい未来を想起できるものではありませんでした。空に向かって新しい地面を作り、そこから得られる利益を配分することで超高層ビルを建てているわけで、結局は金もうけ優先ではないかと。次にやる時は、さらに空に向かって新たな土地を作るのかと。この答えは誰も示せていないはずです。

 

最近目にするようになったタワマンに関するさまざまなルポなどを見ると、結局、そのような未来に目をつぶり開発が続いてきたことが分かります。目先の利益を追求し、今儲かることを優先し、後は野となれ山となれ、私にはそんなふうに見えてなりません。

 

すべてを否定するものではありません。当時から変わっていません。しっかりとまちづくりの計画を立てて、必要なところに超高層の街ができてもいいとは思います。新宿副都心とか、丸の内とか。でも、やりやすいからと言って、海岸沿いなどを超高層ビルで埋め尽くして本当によかったのか、検証が必要だと思います。

 

私は、メリハリのある都市計画、既存の街並みを尊重したまちづくり、未来を見据えた持続可能な開発、などを訴えてきましたが、実は途中から敗北感でいっぱいになっていました。多勢に無勢、大権力に抗うことできず、何の力も発揮することができなかった責任を痛切に感じています。

 

もともと一地方議員にそんな力はない訳ですが、それでも、今の景観を形づくった責任の一端を担っているのだと思います。海沿いに所狭しと立ち並ぶ高層住宅を見て、六本木を中心に至る所に聳え立つ超高層ビルを見て、その行く末をどうしても想像できない自分がいます。

 

今や、山河を眺めて生きる者として、山河の恵みを分けてもらいながら生きる者として、平成時代に憑りつかれたように進められてきた超高層型のまちづくりは、少なくとも持続可能とは言えないと確信します。この数十年のまちづくりを反省し、新たな日本の生きざまを模索する必要があります。

 

参考資料

2022年、タワマンの「大量廃墟化」が始まることをご存じですか(週刊現代)

https://news.livedoor.com/article/detail/17119357/

タワマンの「一斉老化」が止められない(現代ビジネス)

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56992

 

農夫 こさいたろう(小斉太郎;元 港区議会議員)

 

     

 

 

 

 

 

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